インフルエンザ・ウィルス

【疾患の概要】
 インフルエンザは、飛沫を吸い込んでからおよそ1〜3日の潜伏期を経て、悪寒戦慄を伴った高熱で発症する。頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの全身症状に、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咳、疾などの急性呼吸器症状を伴う。通常1週間ほどで快方に向かうが、高齢者では比較的経過が長いことが多く、肺炎、気管支炎などの合併症を伴うと、急速に呼吸不全を起こし死亡する場合がある。とくに肺気腫、慢性気管支炎、喘息、古い肺結核などの呼吸期疾患、心臓病、糖尿病、腎臓病などの基礎疾患を抱えた高齢者の場合には注意が必要である。

インフルエンザウイルスA型
【予防対策】
 インフルエンザが施設内でいったん発生すると、これを制御するのはかなりむずかしいといえる。そこで、いかにインフルエンザを発生させないか、予防対策が非常に重要となってくる。

@一般的な感染予防対策
 手洗い、うがいは基本的だが、重要な対策である。面会者にも協力してもらうよう依頼する。ウイルスは低温、低湿度を好むので、室温22度前後、湿度50〜70%を保つようにする。加湿器はかびや細菌の温床になりやすいので、こまめに洗浄、水の交換を行う。

A感染者の施設内立ち入り制限
 職員に限らず、インフルエンザの可能性のある風邪症状を呈しているような面会者は、施設内への立ち入りを禁ずる措置が必要である。これはよく理解してもらう必要がある。普段、あまり入所者と直接接することの少ないと思われる出入り業者などにも、この点は徹底しなければならない。

Bワクチン接種
 ワクチンは、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスを不活化したもので、次の流行の予測される型のウイルスを選んで作られる。ワクチン接種により、主に血中に赤血球凝集素に対する抗体ができるが、インフルエンザの発症を完全に抑えることはできない。しかし、重症化を抑え、合併症発症を阻止する効果があると考えられている。高齢者での有用性も証明されており、とくに死亡率を下げる効果がある。効果は2〜4か月続くが、終生免疫とはならない.このため、毎年、新たにワクチンを接種する必要がある。接種した部位が発赤、腫脹したり、軽い痛みを感じること、軽度の発熱、倦怠感を訴えることもあるが、ほとんどは数日で消失する。原材料に鶏卵を使っていることから、卵、鶏肉アレルギーのある者、有熱者、全身状態の不良な者には接種することができない。
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