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ノロウイルス感染症とその対応・予防 (2/4)

国立感染症研究所感染症情報センター

【ノロウイルスの感染経路】
@経口感染: ノロウイルスに汚染された飲料水や食物による感染(食中毒)です。特に生カキを食した後に発症することはよく知られています。しかし生(なま)でなくても、よく火の通っていないカキが原因の場合もありますし、他の2枚貝が原因となることもあります。また、最近では調理従事者や配膳者がノロウイルスに汚染された手指で食材をさわる(ノロウイルスに感染している者がよく手を洗わずに素手で食材をさわる)ことによって、サラダやパンなどの貝類とは関係のない食材による集団食中毒も報告されています。

A接触感染・飛沫感染: 接触感染とは、文字通りノロウイルスで汚染された手指、衣服、物品等を触る(接触する)ことによって感染する場合をいいます。この場合も最終的には接触後汚染された手指や物品を口に入れる(舐めるなど)ことにより、ノロウイルスが口の中に入ってしまい、感染します。ノロウイルスの感染力は非常に強く、僅かなウイルスが口の中に入るだけで感染します。従って接触感染は衛生観念が発達していない乳幼児や高齢者等の集団生活施設ではよく発生しているものと考えられます。
 通常の呼吸器感染による場合とは異なりますが、ノロウイルスによる飛沫感染とは、ノロウイルス感染症を発症している患者の吐物や下痢便が床などに飛び散り、周囲にいてその飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴、1〜2m程度飛散します)を吸い込むことによって感染する場合をいいます。嘔吐物や下痢便を不用意に始末した場合にも、飛沫は発生しますので、その処理には充分に気を使うことが必要です。また、嘔吐物や下痢便が放置されていたり、処理の仕方が誤っている場合に、ウイルスを含んだ有機物(乾燥した嘔吐物や下痢便のかけら)やほこりが風に乗って舞い上がり、そばを通った人が吸い込んだり、その人の体に付着して、最終的には口の中にウイルスが入り、飲み込むことによって感染する場合があります。このような感染は、施設内での集団感染の原因になることがしばしばみられますが、特に病院の外来や、場合によっては病棟などではいつでも発生する可能性があり、注意が必要です。

 ノロウイルスの伝播力・感染力は非常に大きく、わずかな接触で容易に感染してしまいます。そして前述したように、様々な感染様式をとるために感染しやすく、また症状が顕在化し易い乳幼児施設や小学校、高齢者施設などの集団生活施設ではしばしば集団感染として爆発的に拡がる場合があります。また、病院などの医療施設では、特に流行シーズン中には次々にノロウイルス感染症の患者が押し寄せてきますから、ウイルスの施設内への浸入を食い止めることは容易ではありません。特に医療スタッフが感染した場合には、それによって院内感染が次々に発生する場合がしばしばみられますので、流行シーズン中は、いつにも増して手洗い等の基本的な標準予防策の徹底を図ることをお勧めします。

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