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ノロウイルス感染症とその対応・予防 (3/4)

国立感染症研究所感染症情報センター

【予防方法】
ノロウイルスにはワクチンもなく、その感染を予防することは容易ではありません。また、一旦施設内に持ち込まれてしまえば、完璧に防御することは困難であるといわざるを得ません。以下に、集団生活の施設においてはどのようなことに注意を払い、どのようにして施設内で発生する感染の規模を最小限に食い止めるべきかということを考慮して、一般的な予防方法をあげてみました。しかしながらわが国で生活する限りにおいては、よほどの隔離された環境ではない限り、長い年月に渡って、感冒等と同様繰り返しノロウイルスの洗礼を受けることは避けられません。ノロウイルスは赤痢やコレラ、あるいはO-157等の腸管出血性大腸菌感染症のように、発病者が少なく、重症化し易い感染症ではありません。ただ、流行期には、感染の機会はいたるところにあり、しばしば日常生活を妨げる結果を招いている、ということは理解しておくべきです。

@調理従事者に関して: ヒトによっては、の場合は不顕性感染(無症状)でノロウイルスを便から排出し続けている場合があります。調理中はマスク(清潔なガーゼマスクや、サージカルマスクが推奨されます)をきちんと着用し、また石鹸(液体石鹸が推奨されます)による手洗いを徹底することが重要です。食材を触る時に、手袋を着用することも場合が多いと思われますが、その手袋が清潔であることは勿論のこと、着用する前の手指は清潔でなければなりません。少なくとも、調理室から搬出される前の食事においては、ノロウイルスを皆無とすることは可能です。

Aスタッフについて: 一般健康成人では、感受性はそれほど高くはなく、たとえ感染しても症状がない場合や、軽症で終わる場合もあります。しかしながらスタッフの方々が病原体保有者となり、ウイルスを伝播する可能性もあります。日々の流水・石鹸による手洗いはきちんと行なってください。特に下痢気味であったり、家族に嘔吐・下痢などの腹部症状がある場合は、トイレ後の手洗いは厳重に行なってください。また、体液(血液、体液、尿、便等)に触れる処置を行った場合は、たとえ手袋を装着して行なっていたとしても、処置後流水・石鹸による手洗いを徹底することは他の感染症の伝播防止も含めて最も重要です。さらに、嘔吐・下痢等の有症状者に接触した場合は、手指に目に見えた汚れが付着していない場合でも、流水・石鹸による手洗いを行なってください。 なお、症状回復後でも1週間程度、長い場合は1か月に渡って便中にウイルスが排泄されるといわれています。また、発病することなく無症状病原体保有者で終わる場合もあります。いずれにせよ、流行期間中は知らない間に感染源となってしまう場合がありますから、流水・石鹸による手洗いを徹底すべきであると思われます。

B健康チェック: 冬季はインフルエンザや急性上気道炎等、様々な感染症が蔓延します。発熱や咳を呈する方々もたくさんいるものと思われますが、それだけではなく、嘔吐・下痢症にも注意が必要です。ノロウイルスの主症状は嘔吐、下痢です。このような症状を呈している患者、入所者、児童・生徒などを速やかに発見し、必要があれば別室などへの隔離の対象となります。

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