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ノロウイルス感染症とその対応・予防 (4/4)

国立感染症研究所感染症情報センター

【予防方法】
C嘔吐物・下痢便の処理: ノロウイルス感染症の場合、その嘔吐物や下痢便には、ノロウイルスが大量に含まれています。そしてわずかな量のウイルスが体内に入っただけで、容易に感染します。また、ノロウイルスは塩素系消毒剤でなければ消毒できません(細菌感染によく用いられる塩化ベンザルコニウム(商品名:オスバン等)は無効ですし、アルコールも効果が低い場合が多いです)。取り扱いには注意が必要です。

ア)発見:ノロウイルスの流行期(主に晩秋から初春にかけて)に吐物や下痢便を発見した場合、できる限り患者、入所者、児童・生徒等を遠ざけてください。トイレならば処理が終わるまでは使用させないように。病室、居室、教室内であっても処理が終わるまでは誰も入らないようにしておくべきですが、不可能であればできる限り遠くに離してください。3m以内には近づかないように指示してください。

イ)処理:放置しておけば感染が広がってしまいかねず、速やかに処理する必要がありますので、有症状者の介抱・隔離と吐物・下痢便の処理は手分けして行なうことをお奨めします。以下、処理の手順についての方法を記しておきます。

方法:マスク・手袋(この場合の手袋は清潔である必要はなく、丈夫であることが必要です)をしっかりと着用し(処理をする方の防御のためです)、雑巾・タオル等で吐物・下痢便をしっかりと拭き取ってください。拭き取った雑巾・タオルはビニール袋に入れて密封し、破棄してください。拭き取りの際に、嘔吐物や下痢便を予め消毒剤に浸したペーパタオル等で覆い、ビニール袋を介してタオルごと拭き取るという方法はよく用いられています。なお、拭き取りによっても飛沫が発生しますので、無防備な方々は絶対に近づけないでください。その後薄めた塩素系消毒剤(200 ppm以上:ハイター等の家庭用漂白剤では200倍程度)で吐物や下痢便のあった箇所を中心に広めに消毒してください。
※次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)には濃度が200ppmでは5分間、1000ppmでは1分間程度浸すことによって、ノロウイルスをほぼ死滅させる消毒効果があるといわれています。もっとも、嘔吐物や下痢便そのものは有機物が豊富にあり、このような薄めた消毒剤では効果は期待できません。その場合は塩素系消毒剤の原液を直接用いることになりますが、使用場所に塩素ガスが発生しますので、集団生活施設や病院では奨められません。

ウ)汚れた衣類など:おう吐物や下痢便などで汚れた衣類は大きな感染源です。そのまま洗濯機で他の衣類と一緒に洗うと、洗濯槽内にノロウイルスが付着するだけではなく、他の衣類にもウイルスが付着してしまいます。おう吐物や下痢便で汚れた衣類は、マスクと手袋をした上でバケツやたらいなどでまず水洗いし、更に塩素系消毒剤(200ppm以上)で消毒することをお勧めします。いきなり洗濯機で洗うと、洗濯機がノロウイルスで汚染され、他の衣類にもウイルスが付着します。もちろん、水洗いした箇所も塩素系消毒剤で消毒してください。

 なお、幼稚園、保育施設、学校等では不用意に衣類を洗浄することによって、かえって施設内に大量に感染者を増加させてしまった例がこれまでしばしば認められてきました。原則的に、子どもたちの嘔吐物や下痢便が付着した衣類は洗浄せずにそのままビニール袋に入れて密封し、保護者の方に持って帰ってもらうことをお勧めします。

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